ニューヨークでおすすめのドーナツ屋さんとして、よくガイドブックに載っているのは Dough だったり、Doughnut Plant だったりするのですが、私が個人的に推したいのは、ブルックリンのグリーンポイント Greenpoint にある、
Moe's Doughs Donut Shop です。
グリーンポイントはもともとドーナツの発祥地の一つとも言われているポーランドからの移民が多く住んでいるエリアで、ドーナツ屋さんといえば1950年代にオープンした老舗の Peter Pan Donut & Pastry Shop が幅をきかせていました。
私もしばらくは、Peter Pan のロイヤルカスタマーでした。
そして2014年の秋に、Peter Pan Donut のキッチンで16年間働いていたエジプト出身の男性が、わずか3ブロックしか離れていない場所でオープンしたのが、 Moe's Doughs Donut Shop。
店構え、品揃え、値段、何から何までそっくりです。
当時のNYタイムズにも、グリーンポイントのドーナツ戦争!として紹介されていました。
長い間働いていた外国人の従業員が、その会社の技術を盗んで行ってしまった、という話が、日本企業で働いていた外国人従業員による技術の流出を生んでいる現状を彷彿とさせてしまい、オープン直後に一度行ったきり、私の足はなかなか Moe's には向かなかったのですが、先日、Peter Pan のドーナツが売り切れていたので、Moe's に行ってみました。気乗りしなかったですが、どうしてもドーナツを食べたくて。
結果。今ではMoe'sのロイヤルカスタマーです。
確かにオープンしたばかりの頃は、Peter Panと同じものを同じ値段($1.1)で売っていましたが、最近は古巣にはない目新しいオリジナルメニューが増えています。
ハロウィンの時期には、こんな可愛いドーナツが並んでいました。
お店の一押しは、レインボードーナツ。
一昔前にレインボーベーグルが流行っていたので、早速取り入れたのだと思います。
老舗では難しいこの柔軟さは、新しいお店ならでは。
味は…普通のケーキドーナツです。
もう一つ、Moe's Donutを気に入っている理由は、お店のおじさんとおばさん。
Peter Pan のお姉さん達と比べて、とってもフレンドリーです。
新しいフレーバーに挑戦すると、次回お店に行った時に感想を聞いてくれます。
参考にしてくれているかどうかはまだ分かりませんが、お客さんのフィードバックを大切にして、もっといいものを作っていこうという気持ちを応援したくなります。
ニューヨークタイムズの記事を読んだ当初、長年働いたお店の味を盗んで開業、というプロセスに正直とても嫌悪感がありました。
またお店のおじさんの息子さんの、「父は自分と家族の生活をよくするためにやっている。一生雇われたままではやっていけないから。(移民の労働力は安く買い叩かれる傾向があるため。)」という言葉を読んで、盗人猛々しいとはこのことか、と思っていました。
でも自分自身アメリカで数年暮らしてみて、数年ぶりにMoe's Donutに行ってみて、二つのお店にも、ニューヨークタイムズの記事にも、また違った印象を持つようになりました。
会社に労働ビザのスポンサーになってもらうために、アメリカ市民と比べてずっと安い賃金で働いている外国人がニューヨークにはたくさんいます。
そういう立場から、古巣と肩を並べるお店のオーナーになったのかと思うと、プロセスに問題はあったかもしれないですが、素直にそれはすごいなぁと思ってしまいます。
記事の中で、古巣のPeter Pan Donutのオーナーの息子さんが、「これがアメリカだから。」と言っているのが今ではよく分かります。
自由の国アメリカ、とか、アメリカン・ドリーム、とか、みんながよく言ってるのはこういうことだったのだなと。
記事にもあるように、アメリカでも飲食業界で古巣の味をそのまま自分の新しいお店で売り出すのは "strong culture of shame" 激しく恥ずかしい行い、です。
私もその考えに賛同します。
でも、Peter Panにはない新しいフレーバーがどんどん出てくるし、おじさん達もフレンドリーだし、もはやPeter Pan のコピーだとは言えない、おすすめドーナツショップです。
私の現在のお気に入り、ラズベリー&クランベリーと、子供のお気に入りのスプリンクルドーナツです。
Moe’s Doughs
126 Nassau Ave (at McGuinness Blvd)
毎日 5:00-21:00
Wifi あり